NetBSD 1.6 のアナウンス
NetBSDプロジェクトは、NetBSDオペレーティングシステムのリリース1.6を
発表できることを喜ばしく思います。
NetBSDは、世界中で最も移植性の高いオペレーティングシステムとして
広く知られています。現在、52の異なるシステムに
一つのソースツリーで対応しており、他のシステムへの移植作業も常に
続けられています。
NetBSD 1.6 では、長い伝統を維持しつつも、
ファイルシステムとメモリー管理の大きな性能改善、セキュリティーの大きな拡張、
そして多くの新しいプラットフォームや周辺機器への対応がおこなわれています。
NetBSD 1.6 の完全なソースコードおよびバイナリーは、世界中の多くのサイトから
ダウンロード可能です。FTP、AnonCVS、SUPやその他の方法による
ダウンロードサイトの一覧が、このアナウンスの最後にあります。
また、最新のダウンロードサイトの一覧は、
http://www.NetBSD.org/mirrors/にもあります。
NetBSD について
NetBSD オペレーティングシステムは、豊富な機能を持つ、オープンソースの、
UNIX風のオペレーティングシステムで、Berkeley Networking Release 2 (Net/2)、
4.4BSD-Liteそして4.4BSD-Lite2の流れをくんでいます。
NetBSDは、11のまったく異なるCPUファミリーと
17のマシンアーキテクチャーをサポートし、52の異なる
システムアーキテクチャー上で動作しており、さらに現在も移植作業が
進められています。
NetBSD 1.6リリースには、39の異なるマシン向けの完全なバイナリーリリースが
含まれています。(残りの13は現時点では完全にはサポートされていませんが、
一部のバイナリーディストリビューションを提供しています。
その情報については、NetBSDウェブサイト http://www.NetBSD.org/ja/
を参照してください。
NetBSDは高度に統合されたシステムです。NetBSDは、移植性の高い
高性能なカーネルに加えて、ユーザーユーティリティー、
さまざまな言語のコンパイラー、X ウィンドウシステム、
ファイヤーウォールソフトウェアなど多くのツールを、
全てソースコード付きで含んでいます。
さらに、パッケージシステムによって
(KDEおよびGNOMEのデスクトップ環境を含む)
サードパーティーソフトウェアをサポートします。
NetBSDプロジェクトの目的についての詳しい情報は、
以下の NetBSD Webサイトから得ることができます。
- http://www.NetBSD.org/about/goals.html
NetBSDはフリーです。すべてのコードは非限定的ライセンスで配布され、
誰にもロイヤルティーを払うことなく利用できます。無償のサポートサービスを、
メーリングリストやWebサイトを通じて受けることができます。
また、商用サポートには様々なものがありますが、その主なものは
以下から見つけることができます。
- http://www.NetBSD.org/gallery/consultants.html
NetBSD についてのより広範囲の情報は、
私達のWebサイトから入手することができます。
- http://www.NetBSD.org/ja/
NetBSD は、世界中に広がる多様な開発者たちの
グループによる作品です。
NetBSDの名前の中の「Net」とは、インターネットに対する感謝のしるしです。
インターネットは、私達がコミュニケーションしたり、コードを共有することを
可能にしました。
インターネットなしでは、このプロジェクト自体存在し得なかったでしょう。
NetBSD 1.6 でサポートされるシステムファミリー
NetBSD 1.6 のリリースでは、以下のシステム用バイナリーを提供しています。
-
このリリースにおいて、以下のアーキテクチャーはソースコード形式でのみ
提供されています。
-
1.5と1.6の間の主要な変更点
1.5リリースと1.6リリースの間の広範囲にわたる開発を全て要約することは難しいことです。
いくつかの重要な点は以下の通りです。
カーネル
- 新しいプラットフォームへのポートは、algor、dreamcast、evbarm、
hpcarm、hpcsh、newsmips、sandpoint、sgimips、sun2、そしてwalnutです。
- 統合されたバッファキャッシュ(UBC)は、ファイルシステムの
バッファキャッシュについてサイズの制限を取り除き、
全ての利用可能なRAM(もし他に使われていなければ!)を利用できるようになり、
全体的なシステム性能を向上させます。
- ラウンドロビンページカラーリングの性能がいろいろなポートで向上しました。
キャッシュの利用効率がよりよく、実行時の動作がより確定しやすく、
プログラムの実行がより速くなります。
- SCSIの中層インターフェースが書き直されました。
割り込みコンテキストの外からのエラー回復を扱うカーネルスレッドを含む、
カーネルの異なる層間のよりきれいなインターフェースを提供します。
詳細はscsipi(9)を参照してください。
- パイプの実装が新しくなりました。
UVM Page Loanの機能を利用して、
オーバーヘッドがより少なくなり性能がとても高くなっています。
- Linuxバイナリーエミュレーションが非常に改良されました。
arm、alpha、m68k、powerpcを新しくサポートし、
また現在ではカーネルバージョン2.4.18をサポートしています。
- いくつかのポートでRAIDframeデバイスからのブートをサポートしました。
- ブートローダーの新しいフラグ-v (bootverbose)と
-q (bootquiet)が追加されました。
ブート中に情報を表示するカーネルコードで使用されます。
- ブート時デバイス設定マネージャーuserconf(4)がカーネルに追加されました。
ブートローダーの-cフラグで有効になります。
- ACPIサポートの開発中のスナップショットが追加されました。
インテルACPICA参照実装の20010831スナップショットに基づいています。
- USB 2.0のサポートが、試験的なドライバーという形の
ehci(4)ホストコントローラーとして追加されました。
- IrDAの基礎的なカーネルサポートがirframe(4)IrDAフレームレベルドライバーとして追加されました。
現在、シリアルドライバーとoboe(4)ドライバーがサポートされています。
- カーネル設定ファイルをカーネルに埋め込んで後で取り出せることができるようになりました。
詳しくはoptions(4)のINCLUDE_CONFIG_FILEを参照してください。
- 多くのカーネル変数がsysctl(8)へ新しく追加されました。
ネットワーキング
- IPv4 TCPとUDPチェックサムのハードウェア計算とIPv6 TCP疑似ヘッダーのキャッシュが可能になりました。
DP83820ギガビットイーサネット、3Com 3c90xB、3Com 3c90xC、Alteon
Tigon/Tigon2ギガビットイーサネットカードのチェックサムオフロード機能もサポートされています。
- TCPとUDP送信時のゼロコピー化が、sosend()の中のページローンコードによって可能になりました。
- ISDN4BSDプロジェクトによるISDNサポートがカーネルに追加されました。
- 802.1Q VLAN (仮想LAN)がサポートされました。vlan(4)を参照してください。
- IPFilterがIPv6のフィルターリングをサポートするようになりました。
- ndbootd(8)が追加されました。NetBSD/sun2マシンをネットブートするのに使われます。
- racoon(8)が追加されました。かめプロジェクトによる、IPsec鍵交換のためのIKE鍵管理デーモンです。
- WEP暗号がifconfig(8)とawi(4)ドライバーでサポートされました。
- wi(4)とwiconfig(8)はアクセスポイントの検索をサポートしました。
また、モードのデフォルトがad-hocではなくBSSになっています。
- ブリッジングがサポートされました。現在はイーサネットのみです。詳細はbridge(4)を参照してください。
- PPP over イーサネット(PPPoE、RFC 2516)がカーネルに追加されました。
ユーザーランドPPPoEクライアントよりもオーバーヘッドがより少なくなっています。
詳しくはpppoe(4)を参照してください。
- ifwatchd(8)が追加されました。
ネットワークインターフェースが上がったり落ちたりした時にup-scriptやdown-scriptを実行します。
pppoe(4)で利用されています。
ファイルシステム
- LFSバージョン2、BSDのログ構造ファイルシステムがさらに安定するようになりました。
- dump(8)、dumpfs(8)、fsck_ffs(8)、fsirand(8)、newfs(8)、
tunefs(8)が-Fオプションをサポートしました。
通常ファイルの中のファイルシステムイメージを操作できます。
- makefs(8)が追加されました。
ディレクトリーツリーからファイルシステムイメージを作ることができます。
(現在はffsのみです。)
- ffs_dirpref()がGrigoriy Orlovさんによって拡張されました。
ディレクトリーを作成してすぐ変更を加えるような場合に、
FFSファイルシステムの性能が顕著に向上します。
- FFS softdepにおいて、フリーブロックを追跡したりディレクトリーブロックを割り当てたりするコードが修正されました。
- シリンダーグループの数が大きいFFSファイルシステムを正しくサポートしました。
- エンディアン独立FFS(FFS_EI)のサポートを修正しました。
- newfs(8)はファイルシステムサイズからデフォルトブロックサイズを計算し、
-cが与えられていない時には最大の可能なシリンダー/グループ(cpg)値を使用します。
- dpti(4)ドライバーが追加されました。
DPT/Adaptec SCSI/I2O RAID管理インターフェースを実装したものです。
dptmgr、raidutil、dptelog、(等々)のLinuxバージョンを使うことができます。
- Windows 2000「NTFS」(NTFS5、読み取り専用)をサポートしました。
- ncr53c9xコントローラーを使うSCSIドライバーでタグつきキューイングをサポートしました。
セキュリティー
システム管理とユーザーツール
- sushi(8)が追加されました。メニューベースのシステム管理ツールです。
- pgrep(1)とpkill(1)が追加されました。名前や他の属性からプロセスを探したりシグナルを送るツールです。
- システムの更新がetcupdate(8)スクリプトや/etc/postinstallスクリプトを使ってより簡単にできるようになりました。
etcupdateは/etcの設定ファイルを対話的に更新します。
また、/etc/postinstallはNetBSDの設定変更をチェックしたり修正するために提供されています。
- stat(1)が追加されました。
stat(2)システムコールで得られる情報へのユーザーインターフェースです。
- BSD sort(1)でGNU sort(1)を置き換えました。
- rc.d(8)スクリプトの「stop」操作ではサービスが終了するまで待つようになりました。
これは「restart」操作の信頼性を向上させます。
- rc.conf(5)でswapoffを有効にすることで、
システム停止時にスワップデバイスを取り除くことができるようになりました。
- rc.shutdown(8)を終了させるオプショナルwatchdogタイマーが追加されました。
rc.conf(5)のrcshutdown_timeoutで秒数を指定します。
その他
- CitrusプロジェクトのマルチバイトLC_CTYPEロケールがサポートされました。
中国語、日本語、韓国語、その他多くのエンコーディングが利用可能です。
- 非rootユーザーでも実行可能な基本システムのクロスコンパイルが完全にサポートされました。
src/build.shで任意のクロスビルドが可能です。
詳しい情報についてはsrc/BUILDINGを参照してください。
少なくとも38のポートについて、NetBSD/i386システム上でNetBSD 1.6リリースのクロスビルドができました。
- armとm68kのCPUプラットフォームではELFへ移行しました
(amiga、hp300、mac68k、mvme68k、sun2、x68kを含みます)。
- 多くのサードパーティーパッケージが更新されました。次の最新の安定したリリースが基本システムに含まれています。
- - amd 6.0.6
- - BIND 8.3.3
- - binutils 2.11.2
- - bzip2 1.0.2
- - cvs 1.11
- - dhcp 3.0.1rc9
- - file 3.38
- - gcc 2.95.3
- - groff 1.16.1
- - Heimdal 0.4e
- - IPfilter 3.4.27
- - kerberos4 1.1
- - ksh from pdksh 5.2.14p2
- - less 374
- - nvi 1.79
- - OpenSSH 3.4
- - OpenSSL 0.9.6g
- - Postfix 1.1.3
- - ppp 2.4.0
- - routed 2.24
- - sendmail 8.11.6
- - tcpdump 3.7.1
- - XFree86 4.2.0 (i386 only)
- 多くのパッケージが新しくNetBSDパッケージコレクションに追加されました。
この中には、最新のオープンソースデスクトップKDE3や、OpenOffice.org、もちろん最新のPerlやApacheや、その他いろいろが含まれています。
これを書いている時点で、およそ3000のサードパーティーパッケージがpkgsrcシステムで利用可能です。
- より速いグラフィックボードへのアクセスが可能なAGP GARTドライバーagp(4)が追加されました。
- /dev/consoleがない場合に、init(8)はmfs(メモリーベースファイルシステム)の/devを作成するようになりました。
- vmstat(8)は-Hオプションと-h hashオプションでカーネルハッシュの統計を表示するようになりました。
- wscons(4)はVGAコンソールを消すことができるようになりました。
詳しくは、1.5から1.6への主な変更の一覧を参照してください。
もちろん、数えきれないほどのバグ修正やさまざまな拡張がおこなわれました。
これからも、カーネルのインターフェースは洗練され、
ポート間でサブシステムやデバイスドライバーが共有されるでしょう。
これらの作業が進んでいくことを楽しみにしていてください。
現時点で注意すべきこととして、sysinstではあらかじめ作成された
サードパーティーバイナリーパッケージやpkgsrcシステム自身を
インストールできません。詳しくは、NetBSDパッケージコレクションドキュメンテーションを参照してください。
さらに注意すべきこととして、NetBSD 1.6として出荷されるX11バイナリーは、
i386以外の全てのポートではXFree86バージョン3.3.6をベースにしていて、
i386だけがXFree86バージョン4.2.0をベースにしています。
i386用のXFree86 3.3.6のスナップショットも利用できるようになるでしょう。
謝辞
NetBSD Foundationは、コード、ハードウェア、ドキュメンテーション、
資金、サーバーの場所、webページその他のドキュメンテーション、
リリースエンジニアリング、その他のリソースを、長年に渡って提供して
くださった全ての人々に感謝します。貢献してくださった人々についての
詳細な情報は以下の場所にあります。
- http://www.NetBSD.org/contrib/
私達が使っているコードの膨大なサブセットを提供してくれた
カリフォルニア大学バークレー校とGNUプロジェクト、
さらにサーバーを提供していただいている
Internet Software Consortium、Redback Networks、
ヘルシンキ工科大学には、特に感謝します。
NetBSD Foundationについて
NetBSD Foundationは1995年に、NetBSDプロジェクトの中核のサービスを管理し、
産業界やオープンソースコミュニティーへのプロジェクトを売り込み、
NetBSDのコードベースの知的所有権を守るために設立されました。
日々のプロジェクトの作業は、ボランティアによっておこなわれています。
NetBSDミラーサイト
あなたに一番近いミラーサイトをご利用ください。
CD-ROM販売者の一覧もご利用ください。
NetBSD 1.6公式リリースに戻る
(連絡先 - 英語、
日本語: www@jp.NetBSD.org)
$NetBSD: NetBSD-1.6.html,v 1.1 2011/09/01 10:29:35 ryoon Exp $
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